「まさか、転んだだけで骨が折れるなんて…」
そう驚いた声を、在宅介護の現場ではよく耳にします。
特に高齢女性に多い「大腿骨骨折」は、ただのケガでは終わりません。
この骨折をきっかけに寝たきりとなり、体力や認知機能の低下が進行し、最悪の場合は命に関わることもあります。
この記事では、「死を招く骨折」とも言われる大腿骨骨折の危険性と、その予防・対応法について、在宅で家族ができることを中心にお伝えします。
大腿骨骨折はなぜ“死を招く骨折”なのか?
大腿骨、特に大腿骨頸部(けいぶ)の骨折は、高齢女性に非常に多く見られます。
閉経後の女性は骨密度が急激に低下しやすく、ちょっとした転倒でも骨が折れてしまうことがあります。
大腿骨骨幹部骨折 日本整形外傷学会
大腿骨頚部骨折 日本整形外傷学会
芸能界でも高齢者の大腿骨骨折は多発しており、樹木希林さん(75歳没)が2018年に転倒して左大腿骨を骨折。
黒柳徹子さん(91才)は、2017年に足をぶつけて右大腿骨を骨折。
同じ2017年には研ナオコさん(71才)も舞台公演中にバランスを崩して転倒し、右大腿骨頸部を骨折。
2015年には赤木春恵さん(94歳没)が自宅で歩行中に転倒し、左大腿骨を骨折。
木の実ナナさん(78才)も、2015年に大腿骨骨折。
ほかにも吉行和子さん(89才)が2013年に大腿骨骨折してます。
命に関わる理由
- 入院や手術が必要になる
- その後、長期間のリハビリが必要
- 寝たきりになりやすくなる
- 合併症で死亡するケースもある
大腿骨を骨折すると、ほぼ100%手術が行われます。
高齢者の場合、手術後に命にかかわる問題が生じるケースが多いといわれてます。
骨折後に大腿骨の骨髄に含まれる脂肪が血管に流入し、それが肺の血管を詰まらせる脂肪塞栓が発生するケースがあります。
するとショック状態になって呼吸障害が起こり、意識を失ってそのまま亡くなります。
脂肪塞栓は、骨折から2~3日後に発症することが多いとのことです。
次に、大腿骨骨折が「間接的」に死の原因となるケースです。
手術後、ベッドで過ごす時間が長くなると「合併症」の危険が増します。
寝たきりになって活動力が落ちると、誤嚥による肺炎が起きやすくなります。
また、床ずれが悪化して、感染症を起こし敗血症になるケースもあります。
そして高齢者が寝たきりになると、認知症の症状を呈するリスクが増します。
つまり、大腿骨骨折は在宅介護のあり方を一変させ、命のリスクにもつながる重大な骨折なのです。
在宅介護で起こる「骨折の連鎖」とその影響
在宅介護の家庭では、わずかな段差や滑りやすい床、夜間の移動など、日常生活の中に危険が潜んでいます。
骨折が引き起こす負の連鎖
- 移動が困難になり、介護負担が急増
- 高齢者本人の心が沈み、認知機能の低下
- 介護者の心身に大きなストレスがかかる
こうした負の連鎖が起こる前に、家庭内での予防と環境の見直しが欠かせません。
在宅でできる!転倒・骨折を防ぐ環境とケア
環境整備のポイント
- 段差にはスロープや手すりを設置
- 滑りやすい場所には滑り止めマット
- トイレや廊下に夜間用の常夜灯
日常生活での工夫
- 足腰を鍛える軽い体操やストレッチ
- 滑りにくい室内履きを選ぶ
- 骨を強くするために、カルシウムやビタミンDを意識した食事
骨折してしまったら…家族ができる対応と支え方
もし大腿骨を骨折してしまったら、早期対応と回復支援がカギになります。
すぐにすべきこと
- 医療機関で治療・リハビリ方針を確認
- 訪問リハビリ・訪問看護の利用を検討
- 要介護認定を受けていない場合は、速やかに申請を行う
心のケアも大切
高齢者本人が「迷惑をかけてしまった」と落ち込むこともあります。
前向きな声かけや、小さな成功体験を積ませる工夫が、回復のモチベーションにつながります。
在宅介護を続ける家族のために──支援制度と相談先
介護保険制度には、骨折後の在宅介護をサポートする仕組みがあります。
活用できるサービスの例
- 訪問リハビリ・デイケア
- 福祉用具レンタル(ベッドなど)
- 住宅改修費の補助制度(手すりなど)
- 地域包括支援センターでの相談
介護者自身が孤立せず、頼れる制度や専門家にアクセスすることも大切なケアのひとつです。
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まとめ
大腿骨骨折は、高齢女性にとって命に関わるリスクがある深刻な問題です。
そして、それは在宅介護を行う家族の暮らしにも大きな影響を与えます。
でも、次の3つを意識することで、そのリスクを減らすことができます。
- 転倒を防ぐ環境づくり
- 骨を強くする生活習慣
- 制度や支援を活用した早期対応
「もしも」の前にしっかり備え、家族が安心して支え合える在宅介護を続けていきましょう。