介護に取り組んでいると、「これでいいのだろうか」「どう接するのが正解?」と迷う瞬間は誰しも経験します。
そんなときに思い出してほしいのが、「介護の三原則」。
これは、介護職の新人研修でも教えられる、介護における大切な考え方の基本です。
在宅介護をしているご家族にとっても、介護の負担を減らし、本人の力を引き出すためのヒントになります。
この記事では、「介護の三原則とは何か?」から「日々の介護でどう活かせるか?」まで、わかりやすく解説します。
介護の三原則とは?
介護の三原則の定義
「介護の三原則」は、主に以下の3つの考え方を指します。
- 自立支援
- 残存機能の活用
- QOL(生活の質)の向上
これは厚生労働省や多くの介護教育機関が示す、介護の根本的な理念です。
単なる“お世話”ではなく、「できることを伸ばす・守る」ことに重きを置いた現代的な介護の指針といえます。
それぞれの原則の意味と背景
自立支援
介護とは「やってあげること」ではなく、「できる力を引き出すこと」です。
自分で食べる、歩く、トイレに行く…ほんの小さなことでも、自分でできることが増えると、本人の自信や尊厳が保たれます。
残存機能の活用
年齢や障がいにより一部の機能が低下しても、まだ使える機能(=残存機能)は必ずあります。
たとえば、足が弱っていても手が使えるなら食事は自分でできる。
そうした力を活かすことが、よりよいケアにつながります。
QOL(生活の質)の向上
安全だけでなく、「その人らしい生活」を支えるのも介護の役割。
趣味を楽しむ、好きな服を着る、家族とお出かけする。
人生を楽しむ権利を尊重することが、QOLの向上につながります。
介護の三原則を実践する具体例
食事・排泄・入浴など日常ケアでの活用例
たとえば食事介助では、最初から口に運ぶのではなく、まずはスプーンを手渡してみる。
トイレ介助でも、立ち上がり補助だけにして「自分で便座に座る力」を活かす。
このように、「あと少しでできそうなこと」に対して“ちょうどよく手を貸す”のがポイントです。
家族介護でも取り入れられる三原則
介護する家族の側も、つい「全部やってあげたほうが早い」「転んだら危ないから」と先回りしてしまいがちです。
でも、少し“待つ勇気”を持つことで、本人の力を守り、将来的に介護負担が軽くなることもあります。
三原則の実践がもたらすメリットと課題
本人にとってのメリット
- 自分でできたという達成感
- 自信と生きがいの回復
- 認知症予防にもつながる
介護者にとってのメリット・難しさ
- 長期的に見れば介護の負担が軽減
- スタッフ間でのケア方針の共有がしやすい
ただし、重度の認知症や身体機能の著しい低下がある場合、「どこまで自立支援を優先できるか」は悩みどころです。
原則を持ちつつ、柔軟な判断が求められます。
現場で迷ったときに立ち返る“原則”として
介護の現場では、本人・家族・スタッフそれぞれの想いが交差し、迷いや葛藤がつきものです。
そんなとき、「三原則」に立ち返ることで、ケアの“軸”がブレずに済みます。
また、ケアマネジャーや看護師など多職種との連携時にも、「三原則を大事にしたい」と共有すれば、共通のゴールを持ちやすくなります。
まとめ:介護の三原則を“支え合い”の合言葉に

介護の三原則は、マニュアルのように画一的なルールではなく、「どう関わるか」という姿勢を示す道しるべです。
- 手をかけすぎず、心をかける
- 本人の人生に寄り添い、できる力を信じる
- “支える”というより、“一緒に歩む”
そんな関わり方が、介護する側もされる側も、笑顔でいられる時間を増やしていきます。