高齢者の健康寿命を延ばすためには、フレイル(虚弱)の予防が重要です。
フレイルとは、加齢により体力や気力が弱まっている状態のことを言います。
フレイルの原因は多岐にわたりますが、大きく分けると「栄養不足」「運動不足」「社会参加不足」の3つが挙げられます。
特に「低栄養」はフレイルの大きな要因となり、たとえ食事をしっかり摂っているつもりでも、必要な栄養素が不足している場合があります。
この記事では、高齢者の低栄養の原因と対策、改善方法や食事のポイントを解説します。
高齢者が食べているのに低栄養になる原因
食事の量は足りていても栄養が不足している
高齢者の中には、「1日3食しっかり食べているから大丈夫」と思っている方も多いですが、実際には栄養バランスの偏りが問題になることがあります。
特に、以下の栄養素が不足しやすいです。
- タンパク質(肉・魚・大豆製品・乳製品)
- ビタミンB群(レバー・卵・葉物野菜)
- カルシウム(牛乳・小魚・チーズ)
- 食物繊維(野菜・果物・海藻)
炭水化物中心の食事になりがちな方や、柔らかいものばかり食べている方は、特に注意が必要です。
食欲の低下と咀嚼・嚥下機能の低下
高齢になると、加齢に伴い食欲が低下し、必要な栄養が摂取できなくなることがあります。
また、歯や口の機能が衰えることで、固いものを避けるようになり、タンパク質源となる肉や野菜の摂取量が減ることもあります。
消化・吸収能力の低下
加齢により、消化酵素の分泌が減ることで、食べ物の消化吸収能力が低下し、栄養素が十分に体内に取り込まれないことがあります。
特に、胃酸の分泌が減少すると、タンパク質やビタミンB12の吸収が悪くなり、低栄養につながります。
病気や薬の影響
慢性疾患(糖尿病・高血圧・心疾患など)を抱えている高齢者は、食事制限をする必要がある場合があります。
※ お医者様の指示に従ってください。
その結果、栄養バランスが崩れ、必要な栄養素が不足することがあります。
また、薬の副作用として食欲不振や消化不良が起こることも低栄養の原因になります。
高齢者の低栄養を改善するための対策
高タンパク食を意識する
筋肉量を維持するために、毎食でしっかりとタンパク質を摂ることが重要です。
以下の食品を意識的に取り入れましょう。
- 肉類(鶏肉、牛肉、豚肉)
- 魚類(鮭、サバ、マグロ)
- 大豆製品(豆腐、納豆、味噌、豆乳)
- 乳製品(牛乳、チーズ、ヨーグルト)
- 卵(目玉焼き、ゆで卵、卵焼き)
厚生労働省の推奨では、高齢者は1日あたり体重1kgあたり1.0~1.2gのタンパク質摂取が望ましいとされています。
エネルギー摂取量を確保する
食が細くなった場合でも、少量でエネルギーを補える食品を活用するのがポイントです。
- オリーブオイルやごま油などの良質な油を料理にプラス
- ナッツ類(アーモンド、くるみ、カシューナッツ)を間食に取り入れる
- バターやチーズを料理に加える
食べやすい形状に工夫する
噛む力や飲み込む力が弱くなった場合は、以下のような調理法を活用しましょう。
- 柔らかく煮る、ミキサー食にする
- とろみをつけて食べやすくする(とろみ剤、片栗粉を活用)
- ひと口サイズにカットする
間食や栄養補助食品を活用する
食事量が減ってしまう場合、栄養補助食品や間食を活用するのも良い方法です。
例えば、栄養価の高いプロテイン飲料、栄養ゼリー、ヨーグルトなどが有効です。
高齢者の低栄養を防ぐ食事例
朝食
- 和食例:焼き魚(サバや鮭)、納豆、ご飯、味噌汁(豆腐とワカメ)、ヨーグルト
- 洋食例:スクランブルエッグ、全粒パン、チーズ、牛乳、バナナ
昼食
- 和食例:鶏肉の照り焼き、ほうれん草のおひたし、ご飯、豆腐と野菜の味噌汁
- 洋食例:ハンバーグ(豆腐入り)、マカロニサラダ、パン、コーンスープ
夕食
- 和食例:煮魚(サバの味噌煮)、ひじきの煮物、ご飯、味噌汁
- 洋食例:オムレツ、ほうれん草ソテー、スープ、ライス
まとめ
中高年世代のメタボリックシンドローム対策の食事・栄養管理では、エネルギー(カロリー)の摂りすぎに注意することが大切です。
しかし高齢者の加齢に伴う低栄養やフレイルのリスクに備えるための食事・栄養管理では、反対にカロリーやたんぱく質をしっかりと摂取することが大切となってきます。
そして高齢者の低栄養は、食事の量ではなく「栄養のバランス」が問題です。特に、タンパク質・ビタミン・ミネラルを意識しながら、食べやすい調理法で摂取することが重要です。
健康的な食生活を送ることで、フレイルを予防し、健康寿命を延ばしましょう。
ぜひ、日々の食事の参考にしてみてください。