日本では「高齢おひとりさま」と呼ばれる単身高齢者の数が年々増加しています。
核家族化や未婚率の上昇、寿命の延びなどが背景にあり、今後もこの傾向は続くと考えられます。
しかし、高齢おひとりさまが増えることで、孤独死のリスクや相続問題といった新たな課題も浮かび上がっています。
本記事では、高齢おひとりさまが増える理由や背景を整理するとともに、孤独死を防ぐための対策、相続に関する問題、そして安心して暮らせる住まいの選択肢について記します。
高齢おひとりさまが増加する理由とその背景
日本では「高齢おひとりさま」と呼ばれる単身高齢者が増加しています。
総務省の統計によると、65歳以上の一人暮らしの割合は年々増えており、特に女性の単身世帯が多い傾向にあります。
背景には以下のような要因があります。
- 未婚・離婚の増加
晩婚化や生涯未婚率の上昇、また離婚による単身高齢者の増加が影響しています。
特に女性は平均寿命が長いため、配偶者に先立たれるケースが多くなっています。 - 核家族化の進行
昔は三世代同居が一般的でしたが、現在は子供世帯と離れて暮らす高齢者が増えています。
仕事の都合で子供が遠方に住むケースも多く、老後を一人で過ごす人が増えています。 - 価値観の変化
「自分の好きなように暮らしたい」「家族に迷惑をかけたくない」と考える人が増え、あえて単身で生活することを選ぶ高齢者も少なくありません。
高齢おひとりさまが直面する孤独死の懸念とその対策
単身高齢者が増える中で、社会問題として取り上げられることが多いのが「孤独死」です。
孤独死とは、誰にも看取られずに亡くなり、時間が経過してから発見されるケースを指します。
孤独死のリスク要因
- 人とのつながりが希薄になる
高齢になると友人や知人と会う機会が減り、社会との接点が少なくなります。
特に退職後は職場の人間関係がなくなるため、孤立しやすくなります。 - 健康管理の難しさ
病気になっても病院に行くのが億劫になり、適切な治療を受けられないまま症状が悪化することがあります。
また、急病時に誰にも気づかれず、命を落とすケースもあります。
孤独死を防ぐための対策
- 地域コミュニティへの参加
自治体やNPOなどが運営する高齢者向けのサロンや趣味の会に参加することで、人とのつながりを持つことができます。 - 見守りサービスの利用
高齢者向けの見守りサービスや、定期的な訪問サービスを活用することで、異変があった際に早めに対応できます。
自治体や企業が提供する見守りアプリやセンサーを活用するのも有効です。 - 近隣住民との関係構築
日頃から近所の人と挨拶を交わし、ちょっとした交流を持つことも重要です。
郵便受けが溜まっている、新聞が取られていないなどの異変に気づいてもらいやすくなります。
高齢おひとりさまと相続問題
単身高齢者が増えることで、新たな相続問題も生じています。
相続に関する主な課題
- 相続人がいない場合
子供がいない高齢者の場合、相続人がいないため、財産の管理や遺産の処理が難しくなります。
特に不動産を所有している場合、誰が管理するのかが問題になります。 - 遺言書がないとトラブルに
遺言書がないと、遠縁の親族が遺産を巡って争うケースもあります。
法定相続人がいない場合は、最終的に国庫に帰属することになります。
相続対策としてできること
- 遺言書を作成する
自分の意思を明確にするために、公正証書遺言を作成しておくと安心です。
信頼できる第三者に財産を託すことも可能です。 - 生前贈与を活用する
生前に信頼できる人や団体に寄付することで、遺産の処理をスムーズに行うことができます。 - 成年後見制度を利用する
判断能力が低下したときに備え、成年後見人を決めておくことで、財産管理や契約の手続きを代行してもらえます。
高齢おひとりさまの新しい住まい方と選択肢
単身高齢者にとって「どこで、どのように暮らすか」は大きな課題です。
最近では、以下のような住まい方が注目されています。
サービス付き高齢者向け住宅（サ高住）
バリアフリー設計で、安否確認や生活支援サービスがついている賃貸住宅。
費用はかかりますが、安心して暮らせる環境が整っています。
シェアハウス型の高齢者住宅
同世代の高齢者と共同生活をするシェアハウス型の住宅も増えています。
交流があるため孤独を感じにくく、家事の負担も分担できます。
コミュニティ型の住まい（コレクティブハウス）
個室を持ちながらも、共有スペースで食事をしたり交流できる住まい方。
人とのつながりを大切にしたい人に向いています。
老後の移住（田舎暮らし・海外移住）
都会の喧騒を離れ、自然豊かな場所で暮らす選択をする人もいます。
海外で暮らす「リタイアメント移住」も人気がありますが、医療環境などを慎重に考える必要があります。
まとめ
高齢おひとりさまの増加は、日本社会において大きな課題の一つです。
しかし、適切な対策を講じることで、孤独死や相続問題などのリスクを減らし、自分らしく安心して暮らすことができます。
今後は、地域のつながりを活かした見守り活動や、新しい住まいの選択肢がさらに重要になってくるでしょう。
おひとりさまだからこそ、早めの準備と情報収集を行い、自分に合った老後の暮らしを考えていくことが大切です。
