【延命治療を考える】家族の決断、もしもの時の話し合いの重要性

高齢化が進む日本において、「高齢者の延命治療」をどうするかという問題は、もはや他人事ではありません。

特に、胃ろうや人工呼吸器の導入といった選択は、本人が判断できないことも多く、「家族の決断」に委ねられる場面が多くなっています。

この記事では、延命治療の現実、そして「もしもの時の話し合い」の重要性について、介護・医療現場の実態を交えてわかりやすくお伝えします。

高齢者の延命治療は、いつから当たり前になったのか？

実は、「高齢者の延命治療」が一般的になったのは1980年代以降のことです。

それ以前の日本では、「食べられなくなったら寿命」と捉え、静かに枯れていくような最期が多く見られました。

医療技術の進歩により、命をつなぎとめる選択肢が増えたことは素晴らしい反面、「その命の質」や「尊厳ある最期」を考える機会が少なくなっているのも事実です。

胃ろうは、口から食べることが困難になった高齢者に栄養を送るための医療処置です。

確かに命をつなぐ手段としては有効ですが、その後の生活の質や本人の希望が尊重されていないケースも多く見られます。

「胃ろうをするかどうか」は、本人の意思が確認できない状態であれば、家族の決断に委ねられます。

医師から「今すぐ決めてください」と言われ、十分な情報がないまま選択を迫られるケースも多く、あとから後悔する家族も少なくありません。

ここで大切なのは、「命をつなぐ」ことと「生きることの意味」を天秤にかけて考えることです。

「胃ろう家族の決断」には、情報と心の準備が必要なのです。

人工呼吸器は、呼吸機能が低下した高齢者の命を支える医療機器です。

しかし、一度装着すると、長期間にわたって外せなくなる可能性があり、「回復の見込みがないまま延命だけが続く」という状態に陥ることもあります。

本人が話すことも動くこともできないまま、「生きているけれど、生きている実感がない」と家族が感じてしまうケースもあります。

このような状態を避けるためにも、「高齢者の延命治療」をどう捉えるか、早い段階で考える必要があるのです。

多くの家庭では、「もしもの時の話し合い」を先延ばしにしています。

しかし、本人が意思表示できなくなってからでは遅いのです。

たとえば、「私は胃ろうは望まない」「自然な形で最期を迎えたい」という本人の思いが事前に家族と共有されていれば、決断に迷いが生じません。

「もしもの時の話し合い」を元気なうちにしておくことが、後悔のない選択につながります。

話し合いの内容は、エンディングノートや「リビングウィル」として文書に残しておくとより安心です。

地域包括支援センターや病院でもフォーマットを入手でき、家族・医師・介護者との共有に役立ちます。

ステップ	考えるべきこと	ポイント
① 延命治療が必要か提示される	医師から胃ろうや人工呼吸器の選択肢が説明される	突然の提案に動揺しやすい冷静な情報収集が大切
② 本人の意思が確認できるか？	意識があるか、過去の発言やエンディングノートがあるか	あれば尊重を第一に家族が迷いにくくなる
③ 意思が確認できない場合	家族が代わりに判断	過去の本人の言動、価値観を思い出す
④ 治療後の生活をイメージする	胃ろう・呼吸器装着後の生活の質や介護負担	寝たきり・会話困難なども想定し、現実的に考える
⑤ 家族間で話し合い・最終判断	家族の価値観をすり合わせる	「本人だったらどうするか？」を共通の視点にする
⑥ 決断後、医療・介護者と共有	意思表示書や同意書などで記録	書面に残すことでトラブル予防・安心材料になる