老老介護とは、高齢者が高齢の配偶者や親を介護する状況を指し、認認介護は、認知症の高齢者同士が互いに介護するケースを指します。
どちらも日本の高齢化が進む中で増加しており、介護者自身が健康問題を抱えることが多く、深刻な問題となっています。
老老介護、認認介護が進む原因と背景
高齢化の進行
日本をはじめとする多くの先進国では高齢化が進んでおり、介護が必要な高齢者が増加しています。
これにより、高齢者同士（夫婦や兄弟姉妹、親子など）で介護せざるを得ない状況が増えています。
核家族化と単身高齢者の増加
かつては三世代同居が一般的でしたが、現在は核家族化が進み、高齢夫婦のみ、または一人暮らしの高齢者が増えています。
介護が必要になっても同居する家族がいないため、高齢者同士で支え合うケースが増加しています。
介護人材の不足
介護職の人手不足が深刻化しており、十分な介護サービスを受けられない高齢者が増えていることも一因です。
特に地方では介護施設の不足や訪問介護の担い手不足が問題となっています。
公的介護サービスの限界
介護保険制度はあるものの、要介護認定を受けられなかったり、費用負担が大きかったりするため、身内で介護をするケースが多くなる傾向にあります。
認知症の増加
認知症患者の増加により、認知症の人同士で介護を行う「認認介護」の問題も深刻化しています。
お互いに適切な介護ができず、事故や介護崩壊につながるリスクもあります。
経済的な問題
年金収入のみで生活する高齢者が多く、介護施設の利用やヘルパーの雇用が難しいことも、老老介護・認認介護が増える要因になっています。
老老介護と認認介護の解決策
介護サービスの充実と利用促進
介護保険サービスの活用促進
- 介護保険の申請方法や利用できるサービスの周知を強化し、必要な人が適切に支援を受けられるようにする。
- 要支援・要介護認定を受けていない人にも、気軽に相談できる窓口を設ける。
介護サービスの人員確保と拡充
- 介護職の待遇改善を進め、現場の人手不足を解消する。
- 地域密着型の訪問介護・デイサービスを増やし、家族に頼らずとも支援を受けられる環境を作る。
地域や社会全体での支援強化
地域包括ケアシステムの推進
- 自治体や地域の住民が協力し、高齢者を支える「地域包括ケアシステム」を強化。
- 民生委員や自治会などが中心となり、定期的な見守りや介護支援を行う。
近隣やボランティアとのつながり強化
- 「支え合いの仕組み」を作り、買い物・掃除・食事づくりなどを助け合える仕組みを整備。
- 高齢者同士だけでなく、地域住民やボランティア、学生などが参加できる活動を増やす。
介護者への負担軽減策
介護者のレスパイト（休息）の確保
- ショートステイやデイサービスの利用促進により、介護者が休める時間を確保する。
- 家族や地域のサポートで、介護者の孤立を防ぐ。
介護者向けの相談・支援制度の充実
- 「介護疲れ」や「介護うつ」を防ぐためのカウンセリングや相談窓口を充実させる。
- 介護経験者同士が情報交換できる場（介護者カフェなど）を増やす。
認知症対策の強化（認認介護への対応）
早期発見・早期対応の推進
- 認知症の疑いがある場合、早めに受診を促し、適切なケアを受けられるようにする。
- 認知症予防のための運動・食事・脳トレなどの啓発活動を強化。
認知症サポート体制の整備
- 認知症対応型のデイサービスやグループホームを増やし、家族だけに頼らない介護体制を整備する。
- 認知症患者を地域全体で見守る「認知症フレンドリー社会」を構築。
経済的負担の軽減
介護費用の支援制度の充実
- 低所得者向けの介護補助金や助成制度を拡充し、介護費用の負担を減らす。
- 自治体の支援制度（介護用品の貸し出し、住宅改修助成など）を活用しやすくする。
仕事と介護の両立支援
- 介護休業制度の利用促進や、在宅ワーク・フレックスタイムの導入を進め、働きながら介護しやすい環境を作る。
- 企業が介護者向けの支援制度（時短勤務、相談窓口など）を整備するよう促す。
老老介護の負担を軽減するサービス
介護保険サービスの活用
介護保険を利用することで、介護者の負担を減らしながら適切な支援を受けることができます。
訪問介護（ホームヘルプサービス）
- ヘルパーが自宅を訪問し、食事・入浴・排泄・掃除・買い物などをサポート
- 介護者の負担を軽減し、高齢者だけの家庭でも生活しやすくなる
デイサービス（通所介護）
- 高齢者が施設に通い、入浴・食事・レクリエーション・リハビリなどを受ける
- 介護者の負担を軽減し、1人の時間を確保できる（レスパイトケア）
ショートステイ（短期入所）
- 施設に短期間（数日～数週間）入所し、24時間のケアを受けられる
- 介護者が休息を取ったり、用事を済ませたりできる
訪問看護・訪問リハビリ
- 看護師やリハビリ専門職が自宅を訪問し、医療的ケアやリハビリを提供
- 介護者が適切なケア方法を学べる
認知症介護の支援サービス（認認介護の負担軽減）
認知症対応型デイサービス・グループホーム
- 認知症の人向けの専門的なデイサービスや共同生活施設で適切なケアを受けられる
- 介護者の負担が減り、安全に過ごせる環境が確保される
認知症サポート医・相談窓口
- 各自治体には「認知症サポート医」や「認知症相談窓口」があり、相談やアドバイスが受けられる
- 早期診断や適切なケアプランの作成に役立つ
地域・自治体の支援サービス
地域包括支援センター（高齢者の総合相談窓口）
- 介護に関する相談を無料で受け付け、適切なサービスを案内してくれる
- 要介護認定の手続きや、介護保険サービスの利用方法もサポート
見守りサービス・高齢者サポート
- 自治体やNPO、民間企業が提供する「見守りサービス」や「買い物支援」を利用
- 声かけ・定期訪問・緊急時の駆けつけなどで介護負担を軽減
家事代行サービス（介護保険外サービス）
- 掃除・洗濯・調理・買い物などを代行してもらい、介護者の負担を軽くする
介護者（介護する側）への支援サービス
介護者向けの相談窓口・支援団体
- 「介護者の会」「家族会」などに参加し、同じ立場の人と情報交換・相談できる
介護休暇・介護休業制度（仕事と介護の両立支援）
- 働きながら介護する人向けの制度を活用し、介護負担を軽減
- 時短勤務・テレワーク・介護休暇の取得なども可能
民間のサービス・最新技術の活用
配食サービス（高齢者向け宅配弁当）
- 栄養バランスの取れた食事を自宅まで届けてもらえる
- 介護者の調理負担が減り、栄養管理もしやすくなる
見守り・介護ロボットの活用
- 「みまもり電話」「見守りセンサー」「AIスピーカー」などを活用し、異変を早期に察知
- 介護ロボット（入浴補助・排泄補助・歩行補助など）を活用し、身体的負担を軽減
「家族介護支援事業」では、介護者の負担を軽減するための相談窓口があります。
家族介護支援事業とは町民税非課税世帯に属する要介護4又は、要介護5の在宅高齢者を介護している家族に介護用品を支給することにより、介護している家族の負担軽減を図る事業です。
まとめ
老老介護や認認介護は、今後さらに増加すると予想されます。
介護する側もされる側も、安心して生活できるように、地域や家族の支え、専門的なサービスをうまく活用していくことが重要です。
老老介護・認認介護は、高齢化社会の進行、核家族化、人手不足、経済的な問題などが複合的に絡み合って生じています。
これに対処するには、公的介護サービスの充実や地域社会の支援、介護負担を軽減する仕組みづくりが重要になります。
老老介護・認認介護の解決には、個人の努力だけでなく、社会全体で支える仕組みが必要です。
介護の負担を1人で抱え込まず、利用できるサービスをうまく活用しましょう。
