在宅介護では、排せつの問題が大きな課題となります。
特に便失禁は介護者にとって精神的・肉体的な負担が大きく、本人の尊厳にも関わるデリケートな問題です。
適切な対策を講じることで、負担を軽減し、介護される側の生活の質を向上させることができます。
本記事では、在宅介護における便失禁の原因や具体的な対処法、予防策について解説します。
便失禁とは?
便失禁とは、自分の意思とは関係なく便が漏れてしまう状態のことを指します。
高齢者に多く見られ、在宅介護の中でも特に悩みの多い排せつトラブルの一つです。
便失禁の種類
便失禁には以下のような種類があります。
- 切迫性便失禁
- 急に強い便意を感じ、トイレに間に合わずに漏れてしまうタイプ。
- 原因:加齢による筋力低下、過敏性腸症候群(IBS)、直腸の感覚鈍麻など。
- 急に強い便意を感じ、トイレに間に合わずに漏れてしまうタイプ。
- 溢流(いつりゅう)性便失禁
- 便秘によって腸内に溜まった便が少しずつ漏れてしまうタイプ。
(腸内に硬い便が詰まってしまい、その隙間から液状の便が漏れ出す) - 原因:腸の動きの低下、長期の便秘、大腸の狭窄(きょうさく)など。
- 便秘によって腸内に溜まった便が少しずつ漏れてしまうタイプ。
- 機能性便失禁
- 認知症や神経系の疾患によって、トイレの場所がわからなかったり、排泄行動が適切にできないことで起こるタイプ。
- 原因:アルツハイマー型認知症、パーキンソン病など。
- 認知症や神経系の疾患によって、トイレの場所がわからなかったり、排泄行動が適切にできないことで起こるタイプ。
便失禁の原因
身体的な要因
- 加齢による筋力の低下:肛門括約筋や骨盤底筋群の衰えによって便をコントロールしにくくなる。
- 便秘:便が硬くなり、排便が困難になると、溢流性便失禁を引き起こしやすい。
- 下痢:感染症や食事の影響で下痢をすると、便意のコントロールが難しくなる。
- 神経系の疾患:脳卒中、脊髄損傷、パーキンソン病などが原因で排せつのコントロールが困難になる。
心理的・環境的な要因
- ストレスや不安:精神的な緊張が腸の働きに影響し、便失禁を悪化させることがある。
- トイレ環境の問題:自宅内のトイレが遠い、狭い、段差があるなどの理由で、トイレに間に合わないケースがある。
- 介護者の対応不足:排せつのタイミングを把握していないと、適切な声掛けや誘導ができず、便失禁につながることがある。
便失禁への具体的な対策
排せつリズムの把握
- 介護記録をつけて、排便のタイミングを把握する。
- 食事後30分〜1時間後が排便しやすい時間なので、その時間にトイレに誘導する。
便秘や下痢の予防
- 食生活の改善:食物繊維を多く含む食材(野菜、海藻、豆類など)を摂取する。
- 水分補給:1日1.5~2リットルの水分を摂る。
(この量は、あくまで一般的な数値であり、高齢者の健康状態や生活環境によって必要な水分量は異なる) - 適度な運動:座ったままでできる体操や散歩を習慣化する。
- 腸内環境の整備:乳酸菌やビフィズス菌を含む発酵食品(ヨーグルト、味噌、納豆)を取り入れる。
トイレ環境の改善
- トイレまでの動線を確保し、スムーズに移動できるようにする。
- 夜間の排泄時のために、ポータブルトイレを寝室近くに設置する。
- 立ち上がりやすいように手すりを設置する。
適切な介護用品の活用
- リハビリパンツ・おむつの使用:漏れを防ぎ、介護者の負担を軽減する。
Amazon:介護用オムツ - 防水シーツ・パッドの利用:ベッドや布団が汚れるのを防ぎ、清掃の手間を減らす。
Amazon:介護用防水シート - おしり拭きや消臭スプレー:清潔を保ち、臭いの問題を軽減する。
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専門家への相談
- 医師の診察:便秘や下痢が続く場合は、医師に相談し適切な治療を受ける。
- 訪問看護や介護サービスの活用:定期的な排泄ケアを受けることで、介護負担を減らせる。
- 骨盤底筋トレーニングの指導:理学療法士などに相談し、筋力を強化するトレーニングを取り入れる。
便失禁を予防するために
規則正しい生活習慣
- 毎日決まった時間に食事を摂る。
- 排便のリズムを整えるために、朝食後にトイレに座る習慣をつける。
ストレスをためない工夫
- 趣味やリラックスできる時間を作る。
- 介護者自身も休息を取ることで、余裕を持って対応できる。
早めの対策
- 便秘や下痢が続いた場合は、放置せずに早めに対処する。
- 軽い症状のうちに、トレーニングや生活改善を始める。
まとめ
在宅介護における便失禁は、本人の尊厳や介護者の負担に大きく影響を与える課題です。
しかし、適切なケアを行うことで改善できる場合が多いです。
排せつのリズムを把握し、食生活や運動の工夫を取り入れ、トイレ環境を整えることで、便失禁の発生を減らすことができます。
また、介護用品の活用や専門家への相談を通じて、より負担の少ない介護を目指しましょう。
便失禁は決して恥ずかしいことではなく、適切な対応を行うことで改善が可能です。
介護する側もされる側も、快適な生活を送るために、できることから始めてみましょう。