「やめたいけどやめられない」「毎日飲んでしまう自分が情けない」
そんな思いを抱えていませんか?
お酒を飲むこと自体は悪いことではありませんが、「飲まないと落ち着かない」「一度飲み始めると止まらない」という状況は、心や体からのサインかもしれません。
この記事では、お酒がやめられないと感じたときに立ち止まって考えてほしい「5つのこと」を紹介します。
自分自身のこととして、また家族や大切な人のためにも、ぜひ最後まで読んでみてください。
心が出しているSOSに気づけていますか
お酒に頼りたくなるとき、心の奥では「苦しい」「つらい」「もう限界」というSOSが出ていることがあります。
ストレス、孤独、将来への不安、仕事や家庭のプレッシャー……。
それらを紛らわす手段として、自然とお酒に手が伸びていることも。
けれど、そのSOSを無視し続けていると、心も体もどんどん疲弊していきます。
「お酒を飲みたい」という気持ちの奥にある、本当の気持ちは何なのか。
一度、静かに自分自身と向き合ってみてください。
飲酒の頻度や量、変化に気づいていますか?
「最近、飲む量が増えてきたな…」と感じたことはありませんか?
最初はたまの楽しみだったお酒が、知らないうちに毎日の習慣になっている。
気づけば昼間から飲むことが増えたり、強いお酒を選ぶようになったり。
これは、悪習慣の始まりのサインかもしれません。
✅ 飲む頻度が週に何回か
✅ 飲む量が増えてきた
✅ 飲まないとイライラする
✅ 朝から飲むことがある
これらの項目に思い当たる場合は、今の自分の飲酒行動を見直すタイミングかもしれません。
アルコール依存症かもしれない?と疑ったことはありますか?
「依存症」と聞くと、少し怖く感じるかもしれません。
けれど、アルコール依存症は「意思が弱い人がなる病気」ではありません。
脳と体に起こる「変化」であり、専門的なサポートが必要な状態です。
以下のような状態が続いているなら、依存症の可能性があります。
- 飲まないと落ち着かない
- 一度飲み始めると止まらない
- 家族や仕事に支障が出ているのに飲み続けてしまう
- やめようと思ってもやめられない
これは、あなたが「ダメな人間だから」ではありません。
専門家の助けを借りることで回復できる「病気」なのです。
WHOによる診断ガイドライン
WHOの疾病分類「ICD」では、アルコールやドラッグなど「精神作用物質」の依存症候群について診断ガイドラインを定めています。
2020年現在適用されている「ICD-10」では、次の6項目のうち3項目があてはまれば依存症と診断です。
(ここではわかりやすいよう「物質」をアルコールに置きかえて説明しています)
強迫的飲酒欲求
飲みたいという強い欲求がわきおこる。
コントロール障害
飲酒の開始や終了、また飲酒量に関して、行動をコントロールするのが難しい。
離脱症状
飲酒を中止したり減量したときに、身体的離脱症状(手の震え・発汗・吐き気など)が出る。
こうした症状をやわらげたり避けたりするため飲酒する。
耐性
かつてと同じ量では酔わなくなり、酔うためにより多く飲む。
飲酒中心の生活
飲んでいる時間や酔いをさますための時間が増え、それ以外の楽しみや興味を無視するようになる。
有害な結果が起きても、やめられない
たとえば過度の飲酒による肝臓障害、抑うつ気分状態、認知機能障害など、明らかに有害な結果が起きているにもかかわらず、依然として飲酒する。
2022年から発効の「ICD-11」(日本での適用時期未定)では診断項目がコンパクトに集約され、下記3項目のうち2項目があてはまれば、依存症と診断します。
●コントロール障害
●飲酒中心の生活
●生理学的特性(離脱症状や耐性など)
該当する項目が多い場合は、医療機関へ相談しましょう。
減酒や支援の選択肢を知っていますか?
「もうお酒を完全にやめなきゃいけないの?」
そう思うと、ハードルが高く感じる方も多いでしょう。
実は最近では「減酒」も支援のひとつの形として広がっています。
たとえば、「減酒外来」という医療機関では、いきなり禁酒を求めるのではなく、あなたのペースに合わせて飲酒量を少しずつ減らす方法をサポートしてくれます。
他にも、以下のような支援があります。
- 精神科や心療内科での相談
- 地域の保健所や断酒会などの民間団体
- オンライン相談窓口
あなたの状況に合った方法が、きっと見つかります。
家族や信頼できる人に話してみましたか?
飲酒の悩みは、なかなか人に言い出せないものです。
「心配をかけたくない」「恥ずかしい」「どうせ理解してもらえない」
そんな気持ち、よく分かります。
でも、ひとりで抱え込むことは、さらにお酒に頼る状況を深めてしまいます。
もし話せる相手がいるなら、まずは思い切って打ち明けてみてください。
家族やパートナーも、実はどう接してよいか悩んでいることが多いもの。
また、家族向けの支援(家族教室や専門窓口)もあるので、一緒に解決策を探すことができます。
おわりに

お酒に頼る気持ちは、決して弱さではありません。
むしろ、日々の生活を必死に乗り切るための「手段」だったのかもしれません。
でも、そのままでは大切な心や人間関係、健康を失うこともあります。
「やめられない」と感じたそのときこそ、自分を守るための第一歩です。
できることから少しずつ、あなたのペースで。
専門家の支援や、周囲の力を借りながら、「お酒に支配されない生き方」へ進んでいきましょう。
参考・支援情報
- 減酒外来を探す → 各地の病院検索サイトや自治体の相談窓口
- アルコール関連問題全国対応ダイヤル:0120-111-351(無料・匿名)
- 保健所のアルコール相談窓口
- 家族向け支援団体(例:断酒会、アラノン)