年を取ると食が細くなるのは当たり前」「粗食が健康にいい」と思っていませんか?
実はこの考えが、高齢者の低栄養を引き起こす大きな要因になっています。
特に在宅療養者では、7割以上の方に低栄養の疑いがあるとも言われており、フレイル(虚弱)、サルコペニア(筋肉減少症)、ロコモ(運動器症候群)の原因にもなります。
しかし、元気な高齢者でも低栄養になるケースは少なくありません。
本記事では、なぜ低栄養が起こるのか、どのような影響があるのか、そして食事の改善方法について解説します。
低栄養はなぜ元気な高齢者にも起こるのか?
「低栄養」とは、必要な栄養素が不足し、健康に悪影響を及ぼす状態を指します。
痩せすぎていなくても、筋肉量が減っていたり、エネルギーが不足していたりすると、低栄養と判断されることがあります。
食事の量が減る
加齢とともに、食欲が減退し、少量しか食べなくなる傾向があります。
特に一人暮らしの高齢者では、食事の準備が面倒になり、簡単な食事で済ませることが増えるため、栄養が不足しがちです。
消化・吸収能力の低下
高齢になると胃腸の働きが衰え、たんぱく質やビタミン、ミネラルの吸収率が低下します。
そのため、十分な量を食べているつもりでも、実際には栄養不足になっていることがあります。
「年寄りは粗食でいい」という思い込み
「高齢者は粗食が健康にいい」「若い頃ほど食べなくても大丈夫」といった考えが根強くあります。
しかし、加齢とともに筋肉が減少しやすくなるため、むしろ高齢者こそしっかり栄養を摂ることが重要なのです。
多くの栄養素で、望ましい摂取量を示した「栄養摂取基準」の必要量や推奨量は、高齢者も若者も差はありません。
例えば、18歳以上のすべての人の「たんぱく質」の推奨量は1日男性60g、女性50g。
総エネルギーに占める「脂質」の割合の目標値は男女共20~30%。
つまり18歳も75歳も同じ量の「たんぱく質」が必要で、脂質を極端に控える必要もありません。
在宅療養者の7割に低栄養の疑いが
在宅療養中の高齢者は、特に低栄養のリスクが高いと言われています。
約7割の在宅療養者が低栄養またはその疑いがあると報告されており、以下のような理由が挙げられます。
- 食事の準備が難しい(介護者の負担が大きい)
- 食欲が低下しやすい(病気や薬の影響)
- 食べられるものが限られる(歯や嚥下機能の衰え)
このような状況では、意識的に栄養バランスを整えることが必要です。
低栄養がもたらす体への影響
低栄養が続くと、体にさまざまな悪影響を及ぼします。
筋力・体力の低下
栄養が不足すると筋肉が減り、体力が落ちます。これにより転倒や骨折のリスクが高まります。
免疫力の低下
栄養不足は免疫機能を弱め、感染症にかかりやすくなります。
特に高齢者は肺炎などのリスクが高まるため注意が必要です。
認知機能の低下
脳の働きにも影響し、認知症のリスクを高める可能性があります。
特にビタミンB群やDHAなどの不足が関係しています。
回復力の低下
病気やケガをした際の回復が遅くなり、入院期間が長引くことがあります。
『健康長寿ネット』より引用します。
・体重減少
・骨格筋の筋肉量や筋力の低下
・元気がない
・風邪など感染症にかかりやすく、治りにくい
・傷や褥瘡(じょくそう:床ずれ)が治りにくい
・下半身や腹部がむくみやすい
低栄養は「フレイル」「サルコペニア」「ロコモ」の原因にも
低栄養は、フレイル・サルコペニア・ロコモといった高齢者特有の問題の要因になります。
フレイル(虚弱)
フレイルとは、加齢による心身の衰えが進み、健康と要介護の中間にある状態を指します。
低栄養が続くと筋力が低下し、フレイルのリスクが高まります。
サルコペニア(筋肉減少症)
サルコペニアは、加齢による筋肉量の減少を指し、特にたんぱく質不足が大きな要因となります。
歩行能力の低下や転倒の危険性が高まります。
ロコモ(運動器症候群)
ロコモとは、骨や関節、筋肉の衰えにより移動能力が低下する状態です。
骨折しやすくなり、寝たきりにつながるリスクがあります。
高齢者にはたんぱく質が欠かせない
低栄養を防ぐために最も重要なのが「たんぱく質」の摂取です。
なぜたんぱく質が重要なのか?
- 筋肉を維持し、転倒や骨折を防ぐ
- 免疫力を向上させ、感染症のリスクを減らす
- 血液やホルモンの材料となり、健康を維持する
高齢者におすすめのたんぱく質食品
- 肉類(鶏肉・豚肉・牛肉)
- 魚(鮭・サバ・マグロ)
- 大豆製品(豆腐・納豆・味噌)
- 乳製品(牛乳・ヨーグルト・チーズ)
- 卵
1日あたり体重1kgあたり1.0~1.2gのたんぱく質を目安に摂取することが推奨されています。
栄養補助食品を利用して食事にプラスする
食事だけで必要な栄養を摂るのが難しい場合は、栄養補助食品を活用するのも効果的です。
おすすめの栄養補助食品
- 高たんぱく飲料(プロテインドリンク)
- エネルギー補助食品(カロリーメイトなど)
- ビタミンサプリメント
日々の食事にプラスすることで、手軽に栄養バランスを整えられます。
私の93歳になる父は、アイソカル ゼリー を利用してます。
味もバラエティーで、美味しいと言ってます。
まとめ
高齢者の低栄養は、「元気だから大丈夫」と思っていても油断できません。
特に在宅療養者では7割が低栄養の疑いがあると言われており、フレイル・サルコペニア・ロコモの原因にもなります。
低栄養を防ぐためには、たんぱく質を意識して摂ること、食事の工夫、栄養補助食品の活用が重要です。
毎日の食事を見直し、健康長寿を目指しましょう!