近年、親や配偶者など家族の介護を理由に、働き盛りの世代が仕事を辞めざるを得ない「介護離職」が増えています。
特に40〜50代の社員に多く、厚生労働省の調査によると、毎年約10万人が介護離職しているとされています。
介護離職の主なリスクは、次のような点です。
- 収入の急激な減少による生活困難
- 再就職のハードルの高さ
- 社会的孤立・メンタルヘルスの悪化
- キャリアの断絶による将来不安
ですが、実は制度や支援を正しく知って活用すれば、離職せずに介護と仕事の両立が可能になるケースも少なくありません。
この記事では、介護離職を防ぐために知っておきたい介護休業制度・給付金・地域支援などを解説。
制度を活用して、仕事を辞めずに乗り切る方法を紹介します。
介護離職を防ぐために使える主な制度
介護休業制度とは?
介護が必要な家族がいる場合、労働者は「介護休業」を取得できます。
これは、通算93日まで、3回までに分けて取得可能な制度です。
対象となる家族

介護休業給付金の受給条件と金額
- 給付金額:休業前賃金の67%(約2/3)
- 支給条件:過去2年間に11日以上働いた月が12か月以上 など
介護休業中は、雇用保険から「介護休業給付金」が支給されます。
出典:「介護休業とは」(厚生労働省)
介護休業と介護休暇の違い
介護休業制度 | 介護休暇制度 | |
取得可能日数 | 要介護者1人につき 、通算93日を限度として3回まで分割取得可能 | 年に5日間、対象家族が2人 以上ならば10日間 |
介護休業給付金の有無 | 雇用保険制度から、休業前の賃金の67%が「介護休業給付金」として支給される | 企業によって異なる |
申請方法 | 開始日の2週間前までに 事業主へ申し出る | 事業主への申出(詳細は企業によって異なる) |
介護休暇は、有給とは別で、1日単位・半日単位・時間単位で取得可能です。
例えば、「今日は通院に付き添うだけ」という時は、半日だけ休暇を取ることもできます。
※手続きは会社の人事・総務に相談することで進めやすくなります。
出典:「介護休暇とは」(厚生労働省)
柔軟な働き方を支える制度
一部企業では、介護に配慮した柔軟な働き方が認められています。
- 短時間勤務制度
- 時差出勤・フレックスタイム制度
- テレワークや在宅勤務の導入
これらを利用できれば、無理なく介護と仕事を両立しやすくなります。
職場に理解してもらうためのポイント
制度があっても、会社が積極的でなかったり、言い出しにくかったりするのが現実です。
ですが、適切な伝え方と準備でサポートを得やすくなります。
上司への伝え方とタイミング
- 早めに相談し、信頼関係を築く
- 状況を具体的に伝える(病状・頻度・今後の見通し)
- 「会社にとっても自分にとっても持続可能な働き方を考えたい」というスタンスを示す
就業規則のチェック
会社ごとの就業規則に、介護支援制度の詳細が書かれていることがあります。
休業や時短勤務がどう扱われるのかを事前に確認しましょう。
人事・労務部門に相談するメリット
個人的な事情を配慮して、柔軟な働き方を提案してくれる可能性もあります。
上司よりも中立的な立場でサポートしてくれる場合も多いです。
地域で使える支援制度・相談窓口
国の制度以外にも、地域で受けられる支援を知っておくことはとても重要です。
地域包括支援センターとは?
お住まいの地域に必ず設置されている公的な相談窓口で、高齢者とその家族の支援をワンストップで行う機関です。
- 介護サービスの相談・手続き
- ケアマネジャーとのマッチング
- 介護予防や認知症対応などの支援
気軽に相談できるため、介護が始まったらまずここを頼るのがおすすめです。
出典: 地域包括支援センター(厚生労働省)
ケアマネジャーに相談する流れ
要介護認定を受けた場合、ケアマネジャーが介護プランを作成します。
家族の負担を減らす訪問サービスの提案なども可能です。
家族会やピアサポート
同じ悩みを持つ人同士が集う「家族会」や地域のボランティア団体などの力も、精神的支えになります。
介護と仕事を両立するための心構えと準備
制度や支援をフル活用しても、やはり不安や悩みはゼロにはなりません。
だからこそ大切なのは「一人で抱え込まない」ことです。
- 周囲に頼る勇気を持つ
- 制度は“申し訳なくて使えない”ではなく“使って当然”という意識で
- 事前に情報を知っておくことが最大の防御になる
まとめ
介護離職は誰にとっても他人事ではありません。
ですが、国や自治体、職場には「辞めずに済むための制度や支援」がしっかり用意されています。
仕事と介護の両立に悩むときこそ、正しい情報を知り、活用することが第一歩です。
まずは小さな相談から始めてみてください。
あなたの未来と家族の安心のために、できることはきっとあります。