健康診断で「脂肪肝」と言われたけど、痛みもないし放っておいても大丈夫。
そう思っていませんか?
実は脂肪肝は、放置すると肝硬変や肝がんへと進行する可能性がある、非常に怖ろしい病気です。
この記事では、脂肪肝の危険性と、それを予防・改善するための食事や運動の方法を解説します。
脂肪肝が「とても怖ろしい病気」と言われる理由
脂肪肝は、肝臓に過剰な脂肪が蓄積した状態で、日本人の3人に1人が該当するとされる非常にありふれた病気です。
しかし「ありふれているから大丈夫」とは決して言えず、放置すると命に関わる深刻な病気へと進行する可能性があるため、「とても怖ろしい病気」とされています。
無症状で進行しやすい
- 脂肪肝は初期にはほとんど症状がありません。
そのため健康診断などで偶然見つかることが多く、自覚症状がないまま進行してしまうことが多いです。
放置すると進行する主なリスク
- 肝炎・肝硬変・肝がん
脂肪肝を放置すると、肝臓に炎症が起こり(脂肪性肝炎)、さらに進行すると肝臓が繊維化して肝硬変となり、最終的には肝臓がんのリスクが大幅に増加します。 - 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)
アルコールをほとんど飲まない人でも、食生活の乱れや肥満、糖尿病などが原因で脂肪肝を発症し、無症状のままNASHへ移行することがあります。
NASHは肝硬変や肝がんのリスクを高めます。 - 全身の生活習慣病リスク増加
脂肪肝があると、インスリン抵抗性が進行しやすくなり、糖尿病や心疾患(狭心症・心筋梗塞)、脳卒中などのリスクも高まります。 - その他の健康リスク
睡眠時無呼吸症候群や不眠・うつ病など、心身さまざまな病気のリスク因子ともなります。
なぜ「怖ろしい」のか
- 進行性であること
一部の脂肪肝は良性で経過しますが、どの脂肪肝が悪化しNASHや肝硬変、肝がんに進むかは現時点では確実に予測できません。 - 治療薬が限られている
脂肪肝やNASHに対する特効薬はまだ確立されておらず、主な治療は生活習慣の改善(食事・運動・減量)です。 - 患者数が非常に多い
現代日本では30%以上の人が脂肪肝を有しており、今後も増加が予想されています。
非アルコール性脂肪肝とアルコール性脂肪肝の違い
項目 | 非アルコール性脂肪肝(NAFLD/NASH) | アルコール性脂肪肝(ASH) |
---|---|---|
主な原因 | アルコール以外(肥満、糖尿病、脂質異常症など) | アルコールの過剰摂取 |
アルコール摂取量 | 1日あたりエタノール20g未満(日本酒1合未満) | 1日あたりエタノール20g以上 |
発症しやすい人 | 肥満、糖尿病、高脂血症、高血圧の人など | 多量飲酒者 |
進行パターン | 脂肪肝→脂肪肝炎(NASH)→肝硬変→肝がん | 脂肪肝→肝炎→肝硬変→肝がん |
予防・改善方法 | 食事・運動など生活習慣の改善が中心 | 禁酒が最重要、加えて生活習慣の改善 |
詳細解説
非アルコール性脂肪肝(NAFLD/NASH)
- アルコールをほとんど飲まない、または飲んでも肝障害をきたさない程度(1日エタノール20g未満)の人に発症します。
- 主な原因は肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧などの生活習慣病です。
- 進行すると、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)となり、肝硬変や肝がんに至ることがあります。
アルコール性脂肪肝(ASH)
- アルコールの過剰摂取(一般的に1日エタノール20g以上)が原因で発症します。
- 飲酒量が多いほど発症リスクが高まり、禁酒することで改善が期待できます。
- 進行するとアルコール性肝炎や肝硬変、肝がんへと進むことがあります。

予防・改善のポイント
- 食事・運動による減量
食生活の見直しと運動習慣が最も有効な予防・改善策です。 - 定期的な検査・早期発見
健康診断などで早期に発見し、適切な対策を講じることが重要です。
脂肪肝は「よくあるから大丈夫」ではなく、「放置すると命に関わる怖ろしい病気」へ進行する可能性があるため、軽視せずに早期発見・生活改善に努めることが大切です。
脂肪肝を予防するための具体的な食生活改善方法
脂肪肝を予防・改善するためには、以下のような具体的な食生活の工夫が有効です。
摂取カロリーを適正に抑える
- 摂取エネルギーの過剰は脂肪肝の最大の原因です。
自分の標準体重に合わせたカロリー摂取を意識し、肥満傾向の人はまず5%以上の体重減少を目標にしましょう。
糖質・脂質の摂りすぎを避ける
- 特にお菓子やジュース、果物に多い果糖やショ糖は肝臓に脂肪が蓄積しやすいので控えめに。
- 揚げ物や動物性脂肪(バター、ラード、マーガリンなど)は飽和脂肪酸が多く、脂肪肝を悪化させるため摂取を減らしましょう。
良質なたんぱく質をしっかり摂る
- 筋肉量を維持し、肝機能を保つためにはたんぱく質が重要です。肉・魚・卵・大豆製品・乳製品などをバランスよく取り入れます。
- 例:卵1個、豆腐1/3丁、魚80g、肉60g程度が1日の目安。
食物繊維を多く摂る
- 野菜、きのこ、海藻、こんにゃくなどの食物繊維は満腹感を高め、エネルギー摂取過多を防ぎます。
油の種類に注意
- 調理油はオリーブオイルや菜種油などの植物性油(不飽和脂肪酸)を選び、動物性脂肪やトランス脂肪酸は控えましょう。
- 魚介類や亜麻仁油などに含まれるオメガ-3脂肪酸(EPA、DHA)は抗炎症作用があり、脂肪肝の改善に役立ちます
アルコールは控える
- アルコールは肝臓で脂肪に変わりやすく、脂肪肝を悪化させます。
可能であれば禁酒、飲む場合も量を厳守し休肝日を設けましょう。
主食は全粒穀類を選ぶ
- 玄米や雑穀米、麦飯などの全粒穀類は、精白米よりも食物繊維やビタミンが豊富で、血糖値の上昇も緩やかです。
バランスよく食べる
- 極端な糖質制限や脂質制限よりも、カロリー全体を抑えつつ、たんぱく質・野菜・主食のバランスを意識しましょう。
脂肪肝を改善するための運動の効果
運動は脂肪肝の改善に非常に効果的であり、体重減少がみられなくても肝臓の脂肪蓄積や肝機能の改善が期待できます。
主な運動の効果
- 肝脂肪の減少
有酸素運動や筋力トレーニングを継続することで、肝臓にたまった脂肪が減少します。
運動により筋肉量が増えると基礎代謝が上がり、脂肪が燃焼しやすい体になります。 - インスリン抵抗性の改善
運動はインスリンの働きを高め、肝臓での脂質合成を抑制します。
これにより肝臓への脂肪蓄積が減少します。 - 内臓脂肪・中性脂肪の減少
継続的な運動は内臓脂肪や血中中性脂肪の減少にもつながります。 - 善玉コレステロール(HDL)やアディポネクチンの増加
運動により善玉コレステロールやアディポネクチン(脂肪燃焼や動脈硬化予防に働く物質)が増加することが確認されています。
効果的な運動の種類と目安
運動の種類 | 内容・例 | 推奨頻度・時間 |
---|---|---|
有酸素運動 | ウォーキング、ジョギング、サイクリングなど | 1回30~60分、週3~4回、週250分以上 |
筋力トレーニング | スクワット、腕立て伏せ、レジスタンスバンドなど | 有酸素運動と組み合わせて実施 |
- 有酸素運動は、週250分以上(例:1日30分以上、週5日)を3カ月以上続けることで、肝脂肪が有意に減少します。
- 筋力トレーニング(レジスタンス運動)も脂肪肝改善に有効で、筋肉量を増やし基礎代謝を高めます。
有酸素運動と組み合わせることでより高い効果が期待できます。
運動のポイント
- 体重減少がなくても効果あり
運動による脂肪肝改善は体重減少がなくても認められます。 - 継続が重要
1日5~10分でもいいので、まずは無理なく始めて継続することが大切です。 - 準備運動・整理運動を忘れずに
怪我予防や疲労回復のため、運動前後のストレッチも取り入れましょう。
医療機関の受診も検討を

脂肪肝は自覚症状がないまま進行するため、健康診断で指摘された場合は、必ず内科や消化器科を受診しましょう。
血液検査や腹部エコーで、肝臓の状態を正確に把握することができます。
必要に応じて、栄養士による食事指導を受けるのもおすすめです。
まとめ
脂肪肝は放置すると命に関わる病気ですが、生活習慣の見直しで改善できる病気でもあります。
今日から、食事や運動といった身近なところから改善を始めてみましょう。
小さな一歩が、将来の大きな健康につながります。
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