2025年問題は、日本の社会にとって避けられない課題です。
しかし、早めに対策を講じることで、介護難民を減らし、すべての高齢者が安心して老後を迎えられる社会を作ることが可能です。
私たち一人ひとりができることとして、親の介護について早めに考える、地域の介護支援制度を知る、介護職への理解を深めるといった行動が重要です。
今後、日本の高齢化がさらに進む中で、社会全体で協力しながら支え合う仕組みを構築していくことが求められています。
2025年問題とは?
2025年問題とは、日本において団塊世代(1947~1949年生まれ)が75歳以上の後期高齢者となり、社会保障や医療、介護の需要が急増する問題を指します。
これにより、医療・介護の人手不足や財政負担の増大が深刻化すると予測されています。
団塊世代は約800万人とされ、これまでの日本経済を支えてきた世代です。
しかし、彼らが一斉に後期高齢者となることで、介護や医療の受け皿が不足し、支援を受けられない高齢者=「介護難民」が増える可能性があります。
介護難民とは?
介護難民とは、適切な介護を受けられない高齢者のことを指します。
要因としては、以下のようなものが挙げられます。
- 特別養護老人ホーム(特養)の不足
介護が必要な高齢者が増加する一方で、特養の入所待機者は全国で数十万人にも上ります。
都市部では特に待機期間が長く、介護を受けたくても受けられない状況が続いています。 - 介護人材の不足
介護業界は長時間労働・低賃金といった問題を抱えており、人手不足が深刻化しています。
2025年には約38万人の介護職員が不足すると予測されており、人材確保が急務となっています。 - 在宅介護の限界
介護施設に入れない場合、在宅介護に頼ることになります。
しかし、介護する家族の負担は大きく、特に子供がいない、または遠方に住んでいる高齢者は支援を受けにくい状況にあります。
これが「老老介護」や「介護離職」の増加にもつながっています。
2025年問題による影響
医療費・介護費の増加
高齢者の増加に伴い、医療費や介護費が急増します。
政府の試算では、2025年には介護費が21兆円を超えると見込まれ、国の財政を圧迫します。
地域格差の拡大
都市部では高齢者人口が急増し、介護施設や医療機関が逼迫。
一方で、地方では人口減少により医療・介護サービスの提供が困難になる地域も出てきます。
「介護難民」が発生しやすいのは都市部だけでなく、地方も同様に深刻な問題を抱えています。
現役世代への負担増加
高齢者を支えるための社会保障費が増える一方で、少子化により現役世代の負担が増大します。
現在、日本の「現役世代1.8人で高齢者1人を支える」構造は、将来的に「現役世代1.3人で高齢者1人を支える」形になると予測されています。
介護難民を減らすための対策
介護施設の増設と運営の効率化
特養やグループホームの新設、民間企業の介護事業参入を促進し、受け入れ体制を強化することが必要です。
また、ICTやAIを活用した効率的な介護システムの導入も重要となります。
※ ICT(情報通信技術)AI(人工知能)
介護人材の確保
介護職の待遇改善や外国人労働者の受け入れ拡大、介護ロボットの活用などにより、人手不足を補う必要があります。
特に、外国人労働者の活用は今後の重要な施策の一つとなるでしょう。
在宅介護支援の強化
訪問介護やデイサービスの充実、家族介護者への支援制度を拡充し、在宅介護の負担を軽減することが求められます。
最近では、オンライン診療や遠隔介護支援サービスも注目されています。
地域包括ケアシステムの推進
住み慣れた地域で医療・介護・生活支援を受けられるような仕組み(地域包括ケアシステム)を整えることが重要です。
自治体や地域住民が協力し、高齢者を支えるネットワークを作ることが求められます。
まとめ
2025年問題による団塊世代の介護難民化は、日本の社会に大きな影響を及ぼします。
しかし、介護施設の増設、人材確保、在宅介護の支援強化、地域包括ケアシステムの推進など、今から対策を講じることで、問題の深刻化を防ぐことが可能です。
私たち一人ひとりが、「自分ごと」として考え、できることから取り組むことが大切です。
介護は他人事ではなく、誰もが直面する可能性のある問題です。
早めの備えと社会全体での支え合いが求められています。