「親の介護、いつか必要になるとは思っていたけど、まさかこんなに厳しいなんて…」
近年、こうした声が各地で聞かれるようになりました。
団塊の世代がすべて75歳以上になる「2025年問題」を前に、日本の介護現場はすでに崩壊の瀬戸際に立たされています。
甚野博則さんの著書『衝撃ルポ 介護大崩壊 お金があっても安心できない!』は、介護の「崩壊」が単なる予測ではなく、すでに始まっている現実であることを、多くの事例と証言をもとに明らかにしています。
この記事では、同書の内容をもとに、介護現場が抱える深刻な問題と、私たちにできる備えについて考えていきます。
介護崩壊とは何か?その本質に迫る
人手不足と高齢化が引き起こす「連鎖崩壊」

介護業界では、慢性的な人手不足が続いています。
若い労働力が集まりづらく、現場を支えるのは年々高齢化する介護士たち。
肉体的にも精神的にも限界が近い中、「もう続けられない」という声が後を絶ちません。
現場の崩壊は、単に労働力の不足だけにとどまらず、利用者へのサービス低下や、事故・虐待の温床にもつながっています。
老老介護・認認介護が限界に達している現実
介護を必要とする高齢者を支えるのが、同じく高齢者である「老老介護」や、認知症の配偶者同士で支え合う「認認介護」が増えています。
無理を重ねた果てに、共倒れや孤独死、介護疲れによる事件にまで至るケースもあります。
「家族がいるから大丈夫」と思っていても、現実は想像以上に過酷です。
介護保険制度の“落とし穴”と格差
介護保険制度は、高齢者を支えるためのセーフティネットであるはずですが、制度の複雑さや地域差、そして“抜け穴”が深刻な格差を生み出しています。
- 希望する施設に入れない
- サービスの質にばらつきがある
- 説明が不十分なまま利用が進む
こうした“制度疲弊”が、利用者と家族を苦しめています。
お金があっても安心できない理由
高額でも“質の低い施設”は存在する
「高いお金を払えば安心できる」と考えるのは、すでに過去の話です。
実際には、月額20万円以上かかるような高級施設でも、職員が不足していたり、ケアの質が追いついていないケースが報告されています。
表面上は豪華でも、介護の本質が欠けている施設もあるのです。
介護業者による“制度の悪用”とその手口
本書では、介護保険の仕組みを利用して利益を上げる一部業者の実態も取り上げられています。
必要以上のサービスを提案して高額請求をしたり、利益優先の運営でスタッフを酷使するなど、「ビジネスとしての介護」が倫理の崩壊を招いている現実も見逃せません。
「選べない」「入れない」介護施設の現実
人気のある施設は数年待ち、空いているのは「問題のある施設」ばかり。
これは都市部でも地方でも共通する問題です。
お金があっても、入れる施設がなければ意味がありません。
そして、そこに追い込まれるのは多くの場合、一般的な家庭です。
現場の声が突きつける“本当の危機”
介護士たちの悲鳴:「もう限界です」

「夜勤は2人で30人をみる」「トイレ介助に1時間以上かかる」
現場からの声は、壮絶を通り越して悲痛です。
離職率も高く、経験者がどんどんいなくなる「負のスパイラル」に陥っています。
【高齢化の加速】
↓
【介護ニーズの増加】
↓
【介護職不足】
↓
【現場の疲弊・離職】
↓
【サービスの質低下】
↓
【利用者・家族の不満・トラブル】
↓
【制度不信・崩壊】
↓
【(再び)介護職が集まらない】
虐待・放置…介護現場の最前線で起きていること
本書では、職員による暴力や利用者の放置といった衝撃的な事例も紹介されています。
もちろん多くの現場は真摯に努力していますが、崩壊しかけた環境では、誰もが加害者・被害者になり得るのです。
利用者家族のリアルな証言:こんなはずじゃなかった
「最期は自宅で」「いい施設で穏やかに過ごしてほしい」
誰もが願うことです。
しかし、現実には介護破綻や経済的困窮に追い込まれ、「こんなはずじゃなかった」と涙をこぼす家族も少なくありません。
私たちに何ができる?介護崩壊から家族を守るために

まずは「現実を知る」ことが第一歩
本書が伝える最大のメッセージは、「知らないことの恐ろしさ」です。
制度、費用、施設、支援策。
何をどう使えばいいのかを事前に調べておくことが、介護崩壊から家族を守るための第一歩です。
介護を“家族だけで抱えない”選択肢とは

- ショートステイ
- デイサービス
- 地域包括支援センター
- ケアマネジャーとの連携
こうした仕組みを早めに活用し、家族だけで背負い込まないことが、継続可能な介護につながります。
自治体・NPO・民間支援を上手に活用するには
「こんな支援があるなんて知らなかった」と後悔しないために、地域の窓口やNPOとつながっておくことが重要です。
情報弱者にならないための意識が、家族を守る盾になります。
まとめ:「介護は突然やってくる」──だからこそ、今から備える

日本の介護現場は、すでに静かに崩壊を始めています。
お金があっても、情報がなければ守れない現実があります。
『衝撃ルポ 介護大崩壊』が私たちに突きつけてくるのは、「備えなければ、誰もが当事者になる」という冷厳な現実です。
だからこそ、今こそ“知ること”が大切です。
大切な家族を、そして自分自身を守るために。